認知症にんちしょう
最終編集日:2022/1/11
概要
認知症は、一度正常に発達した認知機能が、さまざまな原因による脳の疾患や障害などから低下し、日常生活に支障が出てくる状態のことです。患者さんはほとんどが高齢者ですが、若くても発症することがあり、65歳未満で発症すると若年性認知症と呼ばれます。
認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー型認知症はもっとも発症率の高い認知症です。このタイプは脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程で起こります。次に多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症で、そのほかにもレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
認知症では、物忘れが多くなる、今までできていたことができなくなるといった認知機能の低下をはじめ、怒りっぽく攻撃的になる、徘徊するなどの症状がみられることがあります。
原因
認知症の原因はさまざまです。認知症全体の約6割を占めるアルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβとタウと呼ばれるたんぱく質がたまることで、脳の神経細胞が障害されて数が減少し、脳全体が萎縮していくことが原因で起こります。
アルツハイマー型認知症には、遺伝が関係するタイプもありますが、90%は遺伝と関係なく発症します。発症には多数の要因が関係していますが、環境要因、とくに生活習慣が関与することが明らかになってきています(糖尿病、高血圧症、脂質異常症、抑うつ、運動習慣の欠如、喫煙、低教育水準など)。
血管性認知症は、脳出血や脳梗塞、くも膜下出血など、脳血管の障害によって脳が損傷されることで起こります。また、レビー小体型認知症は、脳の神経細胞のなかにレビー小体が蓄積されることで障害が起こります。そのほか、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などの病気が原因となる認知症もあります。
症状
症状として、中核症状といわれる、物忘れなどの記憶障害、これまでできたことができなくなる遂行障害、言語能力や認識力の低下などのほか、認知症の行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる暴言や暴力、興奮、抑うつ、昼夜逆転、不眠、妄想、幻覚、せん妄、徘徊、失禁などがみられることがあります。
アルツハイマー型認知症では、初期から現れる顕著な症状に記憶力の低下があります。加齢による物忘れと区別するポイントとして、最近の出来事についての記憶が著しく低下するのが特徴です。
進行すると、日時や場所、さらに進むと人が誰だかわからなくなる見当識障害が起き、物事を理解し判断する力が著しく低下していきます。
検査・診断
家族の訴えや問診などで認知症が疑われる際には、認知機能だけでなく運動や感覚などを含めた脳神経系全体の異常を把握するために神経学的診察が行われます。次に、記憶、注意、計算、言語などの認知機能を調べるための認知機能検査、認知機能の低下に関係するホルモンや栄養、代謝の異常、感染症などを調べる血液検査、脳の状態を確認するための頭部CT検査、MRI検査などを行います。
脳の機能を調べるために、SPECT検査で脳の血流を、PET検査で脳の代謝の異常を調べることもあります。PET検査ではアミロイドβやタウの蓄積を調べることができます。
髄液中に早期から異常が現れるため、背中に針を刺して髄液を採取し、髄液中のアミロイドβやタウの変化を調べることがアルツハイマー型認知症の診断に有用です。
治療
認知症の治療では、薬による治療とケア、リハビリテーションが中心になります。根本的に治せる薬はなく、残っている正常な神経細胞を活性化させて症状を改善させたり、進行を抑制したりする薬がアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症に使われているのみです。
血管性認知症では、脳血管障害の原因となった高血圧、糖尿病、脂質異常症などを改善して再発を防ぐようにします。
BPSDが現れている場合には、向精神薬などで治療を行います。また、有酸素運動の有効性、前向きな生き方の有効性が認められ、脳を活性化する精神療法や作業療法、音楽療法などのリハビリやケアも行われます。
セルフケア
予防
脳血管障害による血管性認知症については、原因となる生活習慣病を予防するためにバランスのよい食事や運動習慣を保つことが大切です。こうした適切な生活習慣は、もっとも多いアルツハイマー型認知症にも有効であるとのデータもあります。
認知症の発症は高齢になるにしたがって増加します。超高齢社会の日本では、2025年には患者数が約700万人に上り、高齢者の約5人に1人が発症すると予測されています。
だれもがなり得る疾患であることを認識し、物忘れなど疑わしい症状が出てきたときにはできるだけ早く専門外来を受診することが大切です。軽度認知障害(MCI)の段階で発見することで、進行を遅らせられる可能性も高くなります。
監修
昭和大学医学部脳神経外科 名誉教授
藤本司