大動脈瘤だいどうみゃくりゅう
最終編集日:2022/1/11
概要
動脈硬化などによって大動脈壁の弱くなった場所が瘤(こぶ)状にふくらんでいる病態をいいます。血管は、内膜、中膜、外膜の3層構造になっており、内膜に亀裂ができ、内膜と中膜の間に血液が入り込んで裂け目(解離)が広がっていくタイプを解離性大動脈瘤(大動脈解離)といいます。
原因
大動脈瘤ができる原因は不明ですが、腹部大動脈瘤の場合は動脈硬化による血管の老化が深く関係しているといわれています。胸部大動脈瘤の場合は、先天的な組織異常が関係している場合もあります。
動脈硬化や炎症、組織異常などで血管がもろくなると、高い圧力に対応することができなくなり、徐々に血管が広がって大動脈瘤ができます。
動脈硬化をひきおこす危険因子として、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、喫煙、ストレスなどが挙げられます。マルファン症候群などの先天的な結合組織の疾患に胸部大動脈瘤を合併することがあり、まれに黄色ブドウ球菌などの細菌による感染症や外傷から大動脈瘤を併発することもあります。
また、二親等以内の親族に動脈瘤の人がいると発症しやすいという遺伝的な要因も指摘されています。
症状
大動脈瘤の多くは徐々に進行するため、初期はほとんど自覚症状がありません。定期健診や別の理由で受けた画像検査などで偶然に指摘されたり、あるいは発見されないまま経過し、大動脈瘤の破裂によって突然起こることもあります。
大動脈瘤ができた部位に応じた症状が現れることもあります。例えば心臓に近い弓部大動脈の周囲に瘤ができた場合、声帯に関係する神経が圧迫されるとしわがれ声になり、気管が圧迫されると呼吸困難になり、食道が圧迫されると食べ物を飲み込むことが困難になります。
腹部大動脈瘤の場合は、へそのあたりを触れると拍動する塊を感じる場合があります。また、破裂の危険性が切迫している場合は動脈瘤のできた部位に沿った痛みを覚えることもあり、その場合はすぐに手術ができる病院に搬送する必要があります。
検査・診断
大動脈瘤は、定期健診や別の理由で受けたX線検査、超音波検査などで偶然発見されることがあります。ただし正確な診断を行うためには、CT検査やMRI検査などの画像検査が必須です。
治療
大動脈瘤があまり大きくない場合には、血圧を上げない薬などを処方して経過観察を行います。大動脈瘤自体をなくしたり小さくしたりする薬剤はないため、大動脈瘤が大きくなり破裂の危険が出てきた場合には、人工血管置換術やステントグラフト治療(ステントグラフト内挿術)などが行われます。
人工血管置換術は、手術によって大動脈瘤を切除した後、その部分を人工血管に置き換えるものです。
ステントグラフト治療は、足の付け根からカテーテルという管を大動脈内に挿入し、ステントグラフトという金属性のバネを大動脈内に固定して瘤のなかへの血液の流入を防ぎ破裂を予防するものです。
どちらの治療を行うかは患者さんの状態などによりますが、現在のところ、人工血管置換術が標準的な治療法とされています。
セルフケア
病後
禁煙、減塩の食生活、毎日、30分くらいの軽い運動を行い、決められた薬の量を守りきちんと飲みましょう。
予防
大動脈瘤の原因の多くは動脈硬化と考えられるので、動脈硬化の予防が大動脈瘤の予防につながります。
禁煙、適正な体重の維持、適度な運動を行う、過度な飲酒を控える、バランスのよい食事を心がけるなどの生活習慣を維持し、動脈硬化の危険因子を減らすようにしましょう。
また大動脈瘤は自覚症状がないまま進行することが多く、破裂した場合には大出血を起こして死に至る可能性が非常に高い病気です。定期的に検診を受け、大動脈瘤の疑いを指摘された場合には、自覚症状の有無にかかわらず早期に専門医の診断を受け、適切な治療に取り組むことが重要です。
監修
小田原循環器病院 循環器内科院長
杉薫