肺炎はいえん
最終編集日:2022/1/11
概要
肺炎は、気道を通して細菌やウイルスに感染することにより病原体が増殖し、肺内にある肺胞に炎症をひきおこす疾患です。かぜに似た症状で、呼吸器の疾患として比較的よくみられますが、重症化すると肺炎の治癒が望めない状態に陥ることもあり、高齢者の場合は命にかかわるケースもあります。
肺炎は発症病原体によって細かく分類されており、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、非定型肺炎と呼ばれるマイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎などがあります。また、細菌やウイルス以外の原因によって起こるものとして、誤嚥性肺炎や過敏性肺炎、好酸球性肺炎などがあり、薬剤やアレルギーが原因となることもあります。
日本人の死亡原因として肺炎が上位にランクされています。この90%以上は、高齢者の誤嚥性肺炎になります。
原因
肺炎は、健康な人や軽度の持病がある人が、病院や施設には入院(入所)していない日常生活のなかで感染し発症する市中肺炎が中心となります。
原因微生物として肺炎球菌がもっとも多く、次いでインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではなく)、クラミジアなどの微生物、マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌などによる感染があります。とくに免疫力が落ちている場合に感染しやすく、糖尿病などの慢性疾患をもつ人は注意する必要があります。
高齢者によくみられる誤嚥性肺炎は、咽頭/喉頭の神経反射が衰えることにより飲食物や唾液とともに細菌が気管に入ってしまうことが原因となります。
一方、医療機関に入院後48時間以降に発症する院内肺炎は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や緑膿菌などの細菌が原因であるケースが多くみられます。
症状
重症化すると呼吸困難が起きて酸素吸入が必要になったりする場合があります。
細菌性肺炎では、膿状の黄色や緑色のたんが出ることが多くなります。
マイコプラズマ肺炎は頑固なせきが特徴で、肺炎が治った後もしばらくせきがつづく場合があり、感染後咳嗽(がいそう)と呼ばれます。
原因菌によっては、筋肉痛や腹痛、下痢などの症状が出ることもあります。高齢者では肺炎特有の症状が目立たず、食欲低下や全身倦怠感などが現れる程度で進行する場合もあり、気づいたときには重症化していることも少なくないため注意が必要です。
検査・診断
聴診で肺炎の典型的な雑音の有無を確認した後、血液検査や胸部X線検査などを行います。血液検査では体内に炎症がある場合に上昇する白血球数やCRPの値を調べます。
胸部X線検査や胸部CT検査では、すりガラス影や浸潤影と呼ばれる肺内の白い影があるかを確認します。病原体を特定するために尿や血液などから抗原・抗体の検査をしたり、たんのなかの菌を培養したりして調べることもあります。
原因菌が特定できないときや症状が重篤で緊急を要するケースでは、肺を洗浄して(気管支肺洗浄)原因微生物の探索をすることもあります。同時に組織検査により原因微生物を探索することもあります。
治療
原因となっている細菌やウイルスに対して抗菌剤を投与します。マイコプラズマ肺炎などの非定型肺炎は、一般の細菌性肺炎に使われるペニシリンやセフェム系抗生物質が効かないため、マクロライド系、テトラサイクリン系抗菌剤などを投与します。
若い世代でほかに持病がなく軽症の場合は、一般には通院治療が選択されます。重症の場合や乳幼児、高齢者などでは、薬剤の効果などの経過観察や、脱水などの症状を確実に改善するために、入院治療となることが多くなります。
誤嚥性肺炎の場合は、絶飲や絶食によりさらなる誤嚥を予防するようにします。糖尿病などの慢性疾患がある場合は肺炎により基礎疾患が悪化するケースがあるため、基礎疾患の治療も同時に行います。
セルフケア
病後
誤嚥性肺炎の治療後は、食事は必ず座位で行い、口腔内を清潔に保ち、誤嚥を招く可能性がある睡眠薬や抗うつ薬などの減量や中止を検討します。また食事の際には少量ずつ、ゆっくり時間をかけ、黙食を心がけるようにします。
予防
効果的な予防法としては、高齢者では肺炎球菌ワクチン、幅広い世代にインフルエンザのワクチン接種が有効です。インフルエンザは感染すると気道の粘膜が荒れるため病原体が侵入しやすく、肺炎を合併するケースが多くあります。
ただし予防接種は肺炎を完全に予防できるわけではありません。日頃から手洗いやうがいを徹底し、正しい生活習慣を意識するなど、細菌やウイルスを寄せつけないことが大切です。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科特任教授
巽浩一郎